学術講演会レポート

学術講演会レポートルーク・タラハン教授来日記念シンポジウム

講師
ルーク・タラハン (カナダ ラバル大学教授)

基調講演

プラーク中のエコシステムにキシリトールがどのように作用するのか。
研究者として名高いタラハン教授がそのメカニズムを解説しました。

ルーク・タラハン (ラバル大学教授)

1970 ラバル大学にて生化学修士
1972〜 同大学歯学部助教授
1983〜 同大学歯学部教授
◇前カナダ・デンタルリサーチ協会会長

キシリトールの作用

1)非発酵性
2)唾液分泌を促し、唾液緩衝能を上げる
3)エナメル質の脱灰抑制、再石灰化促進
4)発酵性糖からの酸生成抑制
5)ミュータンス菌の成長抑制
6)病原毒性の弱いミュータンス菌の選択、増加
7)プラーク量の減少

PTS糖輸送システム

糖はPTSシステムによって細胞内に取り込まれ、糖-リン酸の状態になります。これは解糖系によってピルビン酸から乳酸に分解されます。この時、PEPのリンの部分がエンザイム1に渡されエンザイム1-Pとなり、次にHprに渡されHpr-Pとなり糖を細胞内に取り込むためのPTSのエネルギー源となり働きます。

フルクトースは2通りの輸送経路があります。一つはフルクトースPTSによって取り込まれフルクトース-6-リン酸になります。もう一つは誘導性のフルクトースPTSによって取り込まれフルクトース-1-リン酸になります。それぞれ解糖系によって乳酸に分解されます。また、PEPがフルクトースを細胞内に取り込むためのPTSのエネルギー源となります。

キシリトールによる成長阻害

菌株によっては非常に抑制されるものと全く抑制されないものとがあり、抑制効果に違いが見られました。

キシリトール非感受性菌はキシリトールの有無によって増殖スピードが変化していません。キシリトール感受性菌は水だけの場合に比べてキシリトールを添加すると増殖スピードが遅くなっているのが分かります。

C14の細菌内部の放射活性から、どの程度キシリトール-5-リン酸として菌体内に取り込まれたかを検討しました。非感受性菌ではほとんど蓄積していませんが、感受性菌では蓄積して110m/molまで達しています。

成長が休止しているミュータンス菌の酸生成量です。キシリトールのみを入れた場合は酸は全く生成していませんが、グルコースを入れた場合は多く酸が生成しています。ここでキシリトールを入れると、酸の生成がかなり低下しています。

菌株を変えて行った場合ですが、キシリトール非感受性菌は全く抑制されていませんが、感受性菌はほぼ50%抑制されています。

PTSは細胞膜の膜組織部分と可溶性部分に構成成分があり、二つを組み合わせた場合にキシリトールのリン酸化が起こっています。また、エネルギー源としてはPEPが必要であり、これを取り除いた場合や、他のエネルギー源であるATPを入れた場合にはキシリトール-5-リン酸は生成されませんでした。

キシリトール-5-リン酸の量を比較した場合、グルコース、マンノース、ガラクトースなどを加えても変化しませんでしたが、フルクトースを加えるとリン酸化はほとんど起こらなくなりました。このことから、キシリトールの取込み、リン酸化はフルクトースと競合状態にあることが分かります。

キシリトール感受性菌の細胞膜ではキシリトールのリン酸化が起こっていますが、非感受性菌では起こっていません。ここにフルクトースを入れると、感受性菌も起こらなくなります。つまり、感受性菌のキシリトールの取込み、リン酸化はフルクトースPTSが関与しており、非感受性菌はこのような反応は全く起こしません。

新鮮な菌株の場合にも、フルクトースPTS活性は感受性菌に比べると非感受性菌はほぼ10%以下になっており、非常に少なくなっています。

キシリトールはフルクトースPTSによって細胞内に取り込まれ、キシリトール-5-リン酸になります。誘導性のフルクトースPTSによっては取り込まれません。またこの時のエネルギー源としてはPTSを必要とします。ATPはエネルギー源とはなりません。
キシリトール-5-リン酸は細胞内に蓄積して、加水分解によってキシリトールとリンになり、そのキシリトールは細胞膜に存在する排出メカニズムによって細胞外に排出されます。その際にはより多くのエネルギーを必要とします。(ただし、この排出メカニズムの存在は証明されていますが、はっきり解明されていません。)
その後、排出されたキシリトールは再び取り込まれることになり、ここにエネルギーを消費するだけの無益回路が存在することになります。
他の糖の代謝によって得たエネルギーPEPもこの無益回路に使われるため、菌体内のエネルギー不足となり、糖を取り込むこともできなくなります。

キシリトール非感受性菌はフルクトースPTSを持っていないため、細胞外にキシリトールが存在しても取込み、蓄積は起こりません。

成長が休止しているソブリヌス菌では、キシリトール量を増やすとグルコースの取込み量が阻害されていることが分かります。

また、キシリトール-5-リン酸が細胞内に蓄積すると、解糖系の酵素PKやPGIなどは90%以上、6-PFKは50%以上阻害されています。

ソブリヌスの実験から解糖系酵素PGI活性はキシリトール-5-リン酸によって阻害されているのが分かります。

糖はPTSによって取り込まれ、多糖類グリコーゲンとして貯蔵されたり、解糖系で代謝されてPEPになります。PEPはPTSのエネルギーとして使用されたり、分解されピルビン酸、乳酸となり放出されます。

キシリトールが存在する場合はエネルギーを消費するだけの無益回路が存在するため、他の糖の取込みを阻害されます。また解糖系酵素を阻害するため、 PEPが少なくなり、ここでもエネルギー不足が起こります。

人の歯面では通常野生株1万個に一つの割合で変異株が存在します。これがフルクトースPTSのない非感受性菌です。長期にキシリトールを使用していると、感受性菌は数が減り、ほとんどが非感受性菌になります。

コントロール群では非感受性菌の割合は5〜8%でしたが、キシリトール群では80%近くにまでなっています。しかし19日目でキシリトールの消費を止めると非感受性菌の割合は低下して、15日後に15%位になっています。

コントロール群の地域ではキシリトール製品が全く販売されていなかったため、キシリトールの消費は天然のベリー類などごくわずかの量のみでした。コントロール群では非感受性菌の割合は10%程度でしたが、キシリトール群では87%までなっています。

1982年から1984年に行われたユリビエスカ研究で被験者となった患者さんの唾液中ミュータンス菌の検討結果です。コントロール群では35%でしたが、継続使用群では85%、使用を中止した群でも75%が非感受性菌でした。たった2年間使用してその後4年が経過しても非感受性菌は減少することなく留まっているという結果となっています。フィンランドでは市場にキシリトール製品があふれていたため、コントロール群も高くなっています。

キシリトールを消費すると、プラーク内ミュータンス菌が減るためプラーク量が減少する、唾液中ミュータンス菌数も減る、病原性の低い非感受性菌が選択され優勢になる、非感受性菌は付着能が非常に低いため唾液中に排出されやすくなるという特徴があります。

キシリトール非感受性菌の特徴は糖からの酸の生成量が少ない、細胞外多糖類の合成方法が変化していて歯面に付着しにくい、菌株どうしはくっつき固まりとなって排出されやすいということです。このように非感受性菌は毒性が非常に弱くなっていますが、ウ蝕の発現とどのような関係があるかは研究段階であり、臨床的な意義については十分解明されていません。

4種の感受性菌と非感受性菌を用いて、ハイドロキシアパタイトに対する付着能を調べた結果、どの菌株でも非感受性菌の付着能は感受性菌に比べて弱くなっています。

通常、口腔内では唾液中ミュータンス菌数とプラーク中ミュータンス菌数には正の相関関係があります。プラーク中のミュータンス菌数が増加すると唾液中のミュータンス菌数も増加します。

ユリビエスカでの1992年の研究からキシリトールを習慣的に摂取していると正の相関関係が崩れています。

以前キシリトールを使用していた人の場合にも正の相関関係は崩れています。つまり、キシリトールを消費することで非感受性菌の割り合いが増え、プラーク中に留まることができなくなるためであり、このことがキシリトールを消費していない人との大きな違いと言えます。

コントロール群では2年後約50%の子供からミュータンス菌が観察されましたが、クロルヘキシジン群では約28%、キシリトール群では約10%の子供からしか観察されませんでした。次の1年間を観察すると、コントロール群では65%、クロルヘキシジンでは35%でしたがキシリトール群では28%程度でした。子供の口腔内ミュータンス菌は常に母親から感染します。母親が感染に非常に重要な3ヶ月から2歳の間キシリトールを使用することで、ミュータンス菌感染を減少することができます。この研究は現在追跡調査中であり、子供に感染したミュータンス菌は感受性菌か非感受性菌かを研究しています。

パネルディスカッション

タラハン教授の講演の中で明らかとなった2種類のミュータンス菌の存在。
これを生化学、細菌学的にどのように捉えていけばよいのかを、国内の専門家とディスカッションしました。

パネラー
ルーク・タラハン (カナダ ラバル大学教授)
花田信弘 (国立感染症研究所 部長)
佐藤 裕 (東京歯科大学 助教授)
進行
福田正臣(日本歯科大学 助教授)

福田
「今日の講演の中でまず最初に出てきたのが、XS(キシリトール感受性菌)とXR(キシトール非感受性菌)との違いでしたが、もう一度整理をする上で、XRは何故う蝕原性が低いのかということについて、不溶性グルカンの合成、酸産生能からタラハン先生にお伺いします。」

タラハン
「これは予備的ではありますが、研究結果が示されています。ただ、予備的な結果としても非常に強力な証拠として、信頼性があるものと考えられます。まず、XRを持っている患者さんの方が、何故恩恵を被るのかということですが、酸産生能が低いということです。XSとXRを比較すると、明らかにXR(キシリトール非感受性菌)の方が酸産生能が低いのです。何故なのかということは、まだ解明されていません。それから、そのグルカン合成メカニズムがないことにで、例えば、スークロースから酸を産生する、あるいはその他の糖から酸を産生するということが効率良く出来ないということが言われていますが、これに関しては、まだ研究が必要です。」

福田
「不溶性グルカンの合成において、不溶性グルカンの性質上の違いというものが明確にでてくるのかという点について、お伺いしたいのですが。」

タラハン
「これに関しては、サーダリン先生が研究しています。この不溶性の多糖類の合成がキシリトールが存在した場合としない場合でどう違うのか、また、キシリトールに感受性を持つ菌株と持たない菌株ではどう違うのかということが研究されています。
これらの化合物は歯面に対する付着性を持たせるということで大変重要な化合物です。例えばGTF*という物質がありますが、これらの物質は付着性を高めるという作用を持っています。XRは細胞面でこれらの物質が欠けているということにより、互いにくっ付き合わないあるいは凝着しにくいという性質があります。」

GTF*・・・ブドウ糖転位酵素と言われる、多糖類を合成するミュータンス菌を持っている酵素。

福田
「この2点について、細胞の外ということで花田先生、それから酸産生能ということで佐藤先生から、コメントをいただきたいのですが。」

花田
「フルクトースPTSというのがストレスのセンサーとして機能しているのであれば、色々なGTFを含めてタンパク発現に影響があってもおかしくないと思います。」

佐藤
「タラハン先生のスライドの中に出てきたPTSは、細胞の機能の色々な調節をやっているということです。その辺のことは、ミュータンス菌ではまだほとんど研究されていないというのが実情です。タラハン先生の言うように、他のグラム陽性菌・グラム陰性菌でそういう機能が幾つか報告されていることから推定されるのだと思います。ですから、解糖系の酵素の何らかのモディフィケーションというのはあるという感じはします。ただ、解糖系は非常に基本的な酵素なので、そんなに簡単にモディフィケーションされてしまうのかなというのが率直な感じですが。」

福田
「GTF等付着性の変化ということになりますと、私達が日常の臨床においてキシリトールの効果に対して、どのように評価していったらいいのかということになります。唾液中、また歯垢中のミュータンスが減る、またその相関性という問題も出てきたかと思いますが、キシリトールを応用した場合の評価法にはどういったものが一番良いのかという点についてタラハン先生にお伺いします。」

タラハン「長期的に見れば、簡単に評価することが出来ます。患者さんのう蝕活性がどんどん下がるので、それを見れば効果があることが分かります。しかし、もっと短期的に効果を見ようとするには、実際にう蝕活性が下がっていることは計測できないわけですから、他のパラメーターを使うしかないわけです。その一つがプラーク中のミュータンス菌の数ということです。プラークの溜まり方が目に見えて少ないことが分かりますので、それは先生方が確認するだけでなく、患者さんにその効果を見せるという意味でもとても良い方法です。キシリトールを含んだガムをずっと噛んでいると、プラークの溜まり方が少ない、それは染め出し液を使うと確かに少ないことが分かりますので、目で見て分かるように患者さんに認識を持たせることが重要ではないかと思います。」

福田
「そうすると私たちが日常デントカルトを使って、パラフィン咀嚼で唾液を取り、その中の細菌叢を計る方法はどうなのでしょうか。」

タラハン
「普通、プラーク中のミュータンス菌数と唾液中のミュータンス菌数には、正の相関関係があるのですが、キシリトールを使っている患者さんはこの相関関係が崩れていますから、例えば唾液中にこれだけあるからプラーク中はこれぐらいだという推測ができない状況にあります。ですから、キシリトールを使っている患者さんには、それに頼って推測をする方法は適切でないと言えます。理想的には、口腔内のプラークを全部集めてきて量を計るのが一番良い方法かも知れませんが、研究者ではそれが出来ても、臨床医では不可能かも知れません。」

福田
「ということは、日常の臨床の中で評価をしていく場合には、その他にどのような指標を使ったら良いのでしょうか。」

タラハン
「極簡単に開業医が使える方法では、伝統的なプラークインデックスの使用が挙げられます。これは歯科衛生士が用いる方法で、そのインデックスを一定のルールで計算すれば、どれぐらいのプラーク量か計算できるようになっておりますので、それを使うのが有効です。もうひとつは、プラークの染め出し液を使うという方法で、確かにこれは目で見てぱっと効果がわかるということでは良い方法ですが、それがどういう意味あいを持っているかについては、歯科医師が解釈しなければなりません。」

福田
「キシリトールの摂取法として、どのくらいの量を摂取したら良いのか、そしてどのくらいの期間摂取したら良いのか、どのくらいの頻度で摂取したら有効なのか、タラハン先生にお伺いします。」

タラハン
「決定的な答えはまだありません。文献に示されている結果では頻繁に摂取した方が結果も良いようです。また量としましても8グラムから15グラムぐらい摂取した方が結果は良いようですが、はっきりとした根拠は文献には出されておりません。一日に3回なら良い、4回なら多すぎるというようなことはまだ分っておりません。ただ一日の回数とすれば、3回から5回の間が良いようであるとされています。それから量についてですが、ガムに含まれる量でいえば、確かに含有率(甘味料中)が高いほうが、結果も良いようです。しかし、含有量が50%程度のものでも効果があるという結果も出ています。また、65%以上あったほうが良いとという結果もあります。しかしこれも十分な証拠はまだありません。どういうレジメが良いかということでは、はっきりしていません。カウコ・マキネン教授の行ったベリーズ・スタディという非常に興味深い比較研究がありますが、処方の仕方では10ぐらいの実験群を設けていたと思いますが、その結果を見るのも興味深いと思われます。」

花田
「タラハン先生に質問しますが、キシリトール以外の糖、例えば日本ではアスパルテーム、パラチノース、エリスリトール等が使われていますが、それらに興味はありますか。」

タラハン
「代用糖として、非醗酵性の糖であって、細菌によって最終産物として酸性の産物ができてこないのであれば、どんなものでも使えると私は思っています。しかし、キシリトール以外の代用糖は、確かに酸の産生は抑制されるかもしれないが、抗菌作用・制菌作用がないわけです。細菌を阻害してプラークを作らないようにする、そういう意味ではキシリトールは効果的であると考えています。」

福田
「マルチトール、エリスリトールについてどのように考えていますか。それらに対してPTSがあるのかということもお伺いしたいのですが。」

タラハン
「確かにそれらの代用糖に関しても、デンタルプラークによって代謝はされません。しかし、どちらもプラーク中の細菌を阻害する効果はないわけです。そういう意味ではキシリトールに劣ると思います。」

花田
「個人的な意見ですが、口腔細菌が醗酵できない、しかし、腸内細菌は醗酵できる、そういうものがもしあるとすれば、それが本当に理想的な代用糖であるわけです。私が知る限りそういう糖はなく、キシリトールの利点は口腔内細菌が醗酵できないために、プラーク叢を変えたり、むし歯を作らないということですが、他方で腸内で醗酵できないことから下痢を起こすということもあるわけです。21世紀になって、口腔内細菌例えばミュータンス菌は代謝できないが、善玉菌ストレプトコッカス・サリバリュースのようなものは代謝できる、良い菌は増えていって、悪い菌は減っていく、そういう違う観点の代用糖が開発できなくはないと思います。ただ現時点ではそういう代用糖はないわけですから、キシリトールは非常に良い代用糖であると思います。」

佐藤
「キシリトールが細胞内に取り込まれるということが重要なポイントであり、他の代用糖の場合は、勿論酸を産生しないが細胞内に取り込まれないから、細菌にとっては関係ないことになってしまう。今後遺伝子がはっきり分ってくると、どういう物質を細菌がどうやって取り込んでくるのかが分かり、遺伝子をいじってたんぱく質の形を変える方法等で、代用甘味料をデザインすることも将来可能だと思います。」

福田
「キシリトールとショ糖を同時に摂取した場合、実際このような同時摂取は研究会ではすすめていないのですが、効果はどうでしょうか。またこの場合、XS、XRでの違いについて、ご説明いただきたいのですが。」

タラハン
「私達が、代用糖について語る時に頭に入れておかなければならないのは、食品に含まれている糖分を完全に別のもので代用するのは無理だということです。70年代の初め頃に、トゥルクで完全にキシリトールで置換してしまうという実験もなされましたが、例外的な実験であったと思います。ですから、毎日の生活の中で、ショ糖を代用糖で完全に置換するというのは、不可能だと頭に入れる必要があります。次に考えなければいけないのが、それに何か足せないかということです。スクロースは日常的な食生活の中で常に存在するものであり、食品を調理する時に砂糖を使うことは否定できないので、そこにキシリトールを加えることを考える。そうなると、キシリトールとショ糖の関係について研究する必要があるわけです。キシリトールの反応として非常に重要なのは、バクテリアに作用してバクテリアのエネルギーを奪ってしまうということです。ですから、バクテリアがエネルギー不足に陥り、そのまわりにスクロースがいくらあってもそれを取り込むことが出来なくなってしまうということです。これが重要です。それから、キシリトールに感受性を持たない菌株ができていくことについて、これは酸を産生しないということと、全く別の側面を持っています。その意義は、この変異体には毒性が非常に少ない、つまりう蝕原性が低いという性質を持っているということです。もう一点、付着能が低いということで、キシリトール非感受性菌は利益をもたらすということです。」

福田
「フッ化物とキシリトールの同時応用をした場合、エナメル質への効果、そしてミュータンス菌への効果、XR、XSでの違いというのはでてくるのかという点についてお伺いします。」

タラハン
「フッ化物を使った場合、XSとXRでどう違うかについての研究は行われていませんし、私達はデータも持っていません。ただ、キシリトールとフッ化物を同時に応用した場合の効果については、これまでに2本文献が発表されています。この2つの文献によれば、フッ化物とキシリトールと同時に応用した場合には相乗効果があるということです。単独で使った場合よりも組み合わせて使った場合の方が、それぞれの効果が増幅するということです。フッ化物はエナメルの再石灰化を促すという効果があります。キシリトールにも同様の効果があります。また、抗菌作用についてもキシリトールにもフッ化物にもその効果があります。相乗効果が生まれて当然だと思います。」